
7月22日午前10時58分、音を立てるように周りが一気に暗くなった。水平線に浮かんだ漁船のライトが遠く輝く。周囲の空気までも一変したように思えた。
気温が下がる。鳥肌が立った。
日本の陸地で46年ぶりの皆既日食が見られた日、私は鹿児島県の屋久島にいた。あいにくの曇り空だったが、その瞬間、辺りは暗闇に包まれた。
神秘的などという言葉は陳腐に思えた。
その日、太陽は1時間かけて徐々に欠けていった。しかし暗くなったのは最後の5分。それまで太陽は欠けながらも周囲は明るさを保っていた。5分で一気に暗くなった。
自然を守ろうという言い方があるが、私はあまり好きではない。上からの目線を感じる。自然は守るのではなく、ひとが邪魔してはいけないものだと思っている。もっと謙虚であるべきだ。
人は大自然の前ではちっぽけな存在だ。いや、そのレベルにすらない。無力だ。なす術がない。
今回の皆既日食を見て、本能で感じて、改めて、そのことを教わった気がする。