
「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が第81回アカデミー賞で日本映画として初めて外国語映画賞を受賞した。日本では当然のように映画館に観客が押し寄せ、米国でも5月下旬に封切られる予定だという。ほかにもギリシャ、韓国、ポルトガルなど世界38カ国での配給が決定しているというから、すごいことだ。まさに快挙と言っていいだろう。
私も先日見てきた。面白い作品だと思ったが、もう少し日本人の死生観、心の葛藤が描かれていてもいいかな、とも思った。
私は大阪府岸和田市で病院(岸和田盈進会病院)の理事長をしている。ホスピス病棟があり、そこには日常的にいや応なしに死が訪れる。病棟の看護士は死についてこう話す。「向こうに行くだけ。ちょっと行くだけのこと。死が終わりではない」。
ワタミが経営している介護施設でも死は訪れる。1カ月前に来たときには元気だったおじいちゃんがもういない。部屋も奇麗に片づけられている。こうしたことはよくあることだ。そんなとき、部屋の中に佇んでこう思う。「人生はあぶくみたいなもの。実にはかない。全て消え去ってしまう。歴史に名前が残ったとしても後に存在するのは解釈のみ」。時間が人の人生の全てを浄化してしまう。
私がこうしたある種、達観した死生観を持つのも母の影響が大きいだろう。10歳の時、私は最愛の人を亡くした。母は自分の命と引き替えに私を生み、育ててくれた。10年間で一生分の愛情を注いでくれたと思う。私は朝晩1日2回必ず仏間に入る。仕事をしていても常に両親、神様が自分を見守ってくれていると感じる。
人生ははかないもの。だからこそ、生を充実させなければならないのだ。
滝田監督はそうしたことを全てのみ込んだ上で、軽いタッチの映画にしたのだろう。「おくりびと」の快挙に拍手を贈りたい。