※1996年11月25日にワタミグループの全社員向けに送られた社内報の内容を紹介します。
「夢に日付を入れてこれからも歩き続けます」
これが1996年(平成8年)10月31日、日経新聞へ掲載された弊社店頭公開広告のメッセージでした。
思えば12年、この「店頭公開」という言葉を意識しない日は一日もなかったような気がします。毎日毎日、日付を入れ続けてきました。
だから、当日は何か不思議な気がしました。公開前の新聞広告および記事を少し追ってみます。
9月26日、日本証券業協会より、「弊社を店頭登録銘柄にする」との発表がなされました。それを受けて27日、「新株式発行に関する取締役会決議公告」および「入札募集のお知らせ」が掲載されました。10月15日、「955円」と最低入札価格決定公告がなされ、22日には「新規公開企業の横顔」で紹介され、次の日、公募価格2470円の決定が発表されました。最低入札価格2830円、最高入札価格3150円、入札倍率58倍という結果でした。高い人気に身の引き締まる思いがしました。
そして当日です。朝10時アーバンネットビルへ。11時の初値決定を待ちました。
ここ2、3日、公募価格割れが続いていたため、正直言って心配でした。
私の願いは「ワタミの株で一人も損をさせたくない」ということです。最低でも公募価格を上回りたい。しかし、今後のこともあるので、少し上回りたいというのが願いでした。
ブザーが鳴りました。「2600円、決定です。立派な子供が生まれましたね」と野村證券の方々から言葉を頂きました。まさに理想的な初値でした。翌日の取引ではストップ高の3000円まで上がり、入札加重平均価格2896円も2日目にしてクリアすることができました。売買高も初日58万3千株、2日目16万6千株と大変な注目を集めさせていただいています。
31日はすべての行事終了後、関内の事務所時代の会議室「シガーバー」にて飲みました。遅くまで残って本部で仕事をしていたメンバーと合流し、朝まで祝杯を上げ続けました。みなの喜びの声を聞き、胸が熱くなる一晩でした。
公開にあたって、今思うことは「誠実な会社であり続けたい」ということです。私たちが順調に店舗展開をさせていただけた理由は、銀行さんが信用してくれたことにあります。資金の流動性を高め、一株当たりの利益を高めるために土地を一坪も購入してきませんでした。つまり十分な担保がないままに、銀行さんから融資を受けてきました。担保は「経営計画」でした。思いを数字にして、それを約束し、果たしてきました。短期的に達成できない時も決して隠さず、「悪い時は、悪い」と正直に報告させていただきました。その結果、「信用」という大きな担保ができました。
公開にあたって、今同じことを考えています。今後の大店舗展開には株式市場からの資金調達は不可欠です。それは「自己資本」となる金利のかからぬお金です。しかしながら、だからこそこのお金に対して真摯な態度で臨まねばならないと考えます。支店長に報告させていただいてきたように、マーケットに対して、株主に対して、継続的なIR活動を行い、常に前向きに正直であり続けることによって「信用」という財産を作り、一人ひとりの株主の方々と「信頼」という絆で結ばれていきたいと願います。
公開後数日して、「株主は私たちの夢に賛同して下さる同志なんだ」と結論が出て、ようやく気持ちが落ち着きました。そう理解することによって、自然体に戻りました。自然体に戻り、この12年間の夢に別れを告げ、公開広告の通り「新しい夢に日付」を入れました。「1998年、東証二部上場、2000年、東証一部上場」です。
店頭公開により信用も高まり、企業としての認知度も高まった今、これらの目標は決して高いハードルではなく、現在の延長線上にある事実であると考えます。達成のための方針を公開挨拶状に書いておきました。
「当たり前を当たり前に、しかし、徹底して行うことにより、当たり前でない結果を出してまいります。和民のあるべき商品、サービス、クリンリネスの追求、お客さまを思う心の徹底、私たちが"店頭公開"に浮かれずに、脇を固めて、今まで以上の努力を継続することによって、新しい夢の実現は可能です。無駄使いはせず、より一層、経費感覚を高め、投下資本を抑え、凡事徹底により売上を最大にし、それぞれの社員が主人公意識と強い危機意識を持ち続けることにより、必ずそれは達成されます」
私のノートの1ページ目に人生の計画が書いてあります。
第三期・36歳~45歳(38歳東証二部、40歳東証一部)「国内規模における経営目的実現期」、「地球規模における展開準備期」とあります。ちなみに、第二期は創業から今年までで、テーマは「基盤作り」でした。今ようやく「基盤作り」は終わり、「経営目的・実現期」に入りました。
「店頭公開まで、本当によくやってくれた」と、みなに、同志である一人ひとりの社員に、心からお礼を言いたい気持ちです。しかし、それ以上に、「いよいよ、準備完了だぞ。これからが本番だ」と気合も入れたく思います。「経営目的・実現期」に突入しました。「店頭公開」がそのスタートです。