※2009年3月25日にワタミグループの全社員向けに送られたメッセージの内容を紹介いたします。
台湾・香港・深圳に行ってきました。
今回の海外出張の目的はズバリ「インターナショナルの立ち上げです」
昨年秋に「ワタミインターナショナル」という会社を設立しました。
目的は外食の市場を日本国内のみならず世界へ広げることです。
小さくなっていく国内外食市場の「守り」を固める一方「和民」を世界に広げていくことで外食企業として常に「攻め」の状態をキープするために「ワタミインターナショナル」という会社を立ち上げました。
将来は、日本国内外食の売り上げと海外外食の売り上げは、同規模になるだろうと考えています。
そのための大きな第一歩を踏み出すにあたって「ワタミインターナショナル」と香港や台湾との現地法人との責任分担やお互いの関係を明確にすることが必要でした。
その他、我々のアメリカのパートナーである「T.G.Iフライデーズ」をモデルとしたフランチャイズ・パッケージづくり、海外における「ワタミ理念」の浸透方法、香港、台湾でスタートした「和民」の小商圏業態「和亭」の進むべき方向性の確認
香港・台湾共に苦戦している住宅街型「和民」対策、そして今年からスタートする「シンガポール和民」の一号店の開店準備状況および二号店の契約内容の確認これら多くの課題をクリアすると同時にもうひとつの目的を持っての出張でした。
それは「私が会長になるということ」を「海外ワタミ」にて一年早く、実験してみようということでした。
私が会長になるということは私が「ワタミ」から今よりも離れるということです。
「離れる」の意味には「時間」「距離」の意味があり時間的には頻繁な接触がなくなることであり距離が遠ければ必然的にそのような状況は生まれます。
「海外ワタミ」には年二回しか今でも行っていませんでした。その二回共に各国で全体会議を開き「ワタミの思い」を伝えてきましたが、日本の社員との距離からすれば圧倒的に遠いものでした。
そういう意味では「自立」せざるを得ない状況が「海外ワタミ」にはありました。
今までワタミグループは「衆議独裁」でした。
皆で話し合いもするし皆の意見も聞いてきましたが決めるのは「私」でした。
さまざまな情報を集め「仮説」を立てさまざまな事実を確認して「検証」し私がひとりでグループの重要なことを決定してきました。
私が会長になるということはこの「仮説」と「検証」を共有し皆が納得できるかたちでひとつひとつの決定がされていくという状況に変えるということです。
今回台湾・香港に到着からすぐに「仮説」と「検証」の事実の共有作業に入り「決定」にむけて積極的な話し合いがなされました。
一日目、二日目と非常にいいカタチでした。
もちろん出張中会議のみならず店舗試食・不振店訪問・新店立地調査等を積極的に行いました。
日本人の現地スタッフと巡回しながらいくつかの気になる点がありました。
「店の場所を間違う」のです。
正直「あれっ変だな」と感じました。
不振店です朝から晩まで店に張り付いて何としても立ち上げなければならないお店です。
赤字はまさに仲間の努力や頑張りを無にするものです。にもかかわらず場所を間違う。
たまたまにしてはおかしいと感じていました。
日本のフードサービスの社長にも今回同行をお願いしていました。
店舗、特にキッチンを見てもらうためです。
視察から帰ってきて報告を受けました。
「日本人現地スタッフは店を見ていません」
アラームが鳴りました。
香港和民を以前立ち上げ現在は上海のFCオーナーをしている社長から報告を受けました。
「香港和民の一番繁盛店で十六席もう半年入店制限をしています。」
愕然としました。
日本人幹部に聞きました。
「お前たちは店を見ているのか」
一人は答えました「月に三~四回」
一人は答えました「週に一店」
たった十九店の会社です。
「和民」が立ち上がるとき十九店の規模のとき私たちは何をしていたか?
店、店、店そしてまた店、店、店です。
本部には答えなどありません。
「店」にすべての答えがあるのです。
思わず声が大きくなりました。
「ふざけるな毎回店に行かずに日本人スタッフは雁首を並べて本社で何をしているのか?言ってみろ」
彼らは黙りました。
最終日の会食が台無しでした。
出発の日午前中最後のミーティングでした。
私が会長になったら本部ばかり大きくなり現場に行こうともせず現場を無視した組織になったらたまらないと思いました。
~一人でも多くのお客様にあらゆる出会いとふれあいの場と安らぎの空間を提供するため~に私たちは外食事実を日本に世界に広げようとしているのです。
ミーティングの参加資格
つまりこれから独裁でなくなるワタミグループのすべての会議に出席する資格は理念・目的そして危機感の共有です。
自分ごととして問題を考えることができる。「自分の後ろにだれもいない」の強い危機感を持っている現場こそすべてを誰よりも理解していること
お客様も笑顔が最大の喜びであること
これらの資質のないものが分かったふりして会議を始め衆議し、皆で物事を決めようとしたとき無責任の固まりとなり会社は潰されます。
「仮説」と「検証」の共有意志決定の合意は大いに結構。
ただ、それには資格が伴うことを強く認識してもらいたいと思います。
翌日インターナショナルを潰してもいいとの覚悟でミーティングに臨みました。
それぞれがそれぞれに反省の弁を述べました。
夜遅くまで毎日仕事をしてくれていることもわかりました。
彼らは「言葉」を言いわけにしてすべてのことに責任を持つのではなく一部の責任を全うすることで責任を果たそうとしていたことがわかりました。
彼らの間違いを正し、もう一度チャンスを与えることにしました。
そのとき彼らに今回のことはグループ報には書かないと言いましたが敢えて書きました。
日本に帰ってから今回のことを考えれば考えるほど怖くなったからです。
ワタミグループは「現場」がすべての会社です。
敢えて、労働集約性の高い仕事ばかりを選んできました。
何故なら汗をかいて働くなかにこそ人としての成長があり、人の幸せにつながると信じているからです。
何故ならお客様やご入居者様の笑顔とありがとうこそが最大の報酬だと信じているからです。
本部で仕事をする人間が偉そうな顔をして現場に行かなくなったとき「ワタミ」は崩壊します。
私は会長になったら二度と社長には戻りません。
だから今回の出来事は背筋が寒くなります。
長い間理念を徹底的に伝えてきたメンバーでさえ今回のような考え違いをするのです。
ミーティングの最後に「ワタミインターナショナルの五年後」の発表がありました。
一.世界最高のサービス業ブランドへ
一.世界中の人から感謝されるなど
それぞれ素晴らしいものでした。
その世界をカタチにするために最も大切なことそれこそが一人一人がどれほど強い危機感を持てるかなのです。
ワタミの明日は一人一人の心の中と覚悟にあるので一人一人がそのことを意識するところから第二の創業は始まるのです。