※2006年3月25日にワタミグループの全社員向けに送られた社内報の内容を紹介します。
菜の花咲き乱れ、桜咲き誇るある春の日に、「ワタミの森」の植樹祭へ行く。
千葉県緑化推進委員会の方々、NPO団体である千葉県里山センターの方々や土地のオーナーさん他「ワタミの森」を応援して下さっている方々と共に「ワタミの森」のシンボルツリーとしてヤマザクラを植樹する。
「ワタミの森」は、ワタミファーム千葉山武農場に程近い場所に位置する。大きさは9ヘクタールに及ぶ、一歩森の中に入るとそこは別世界、鬱蒼(うっそう)と約10メートル程の杉が立ち並ぶ世界。ところどころに辛夷(こぶし)の白い花が咲いている。杉と杉の間から木漏れ日こぼれ、幸せな空間。こんなに素晴らしい森に、どう手を加えるのかと考えながら森を歩いていると、ワタミエコロジーのスタッフが話し始めた。
「この杉はほとんどが「溝腐れ病」というキノコの胞子が樹木に付着して徐々に腐っていくという病気にかかっています。地球温暖化の影響だそうですが、本当のところはわかりません。この山武地区のサンブスギの85%がこの病気にかかりサンブスギは壊滅的な状態にあります。
私たちの森づくりは、病気にかかった木を伐採するところから始まります。その伐採した跡地に地域固有の生態系を取り戻すために広葉樹を中心に植樹します。
下草刈りや間伐を行いながら植樹木の生長を促し新しい森へと生まれ変わらせるのです。」
「この病気の杉は成長に何年かかっているの?」
「50年だそうです。」
「植樹した広葉樹が大きくなって二酸化炭素をしっかりと吸収できるようになるまでどのくらいかかるの?」
「最低でも10年から20年です。」
その話を聞きながら、私の頭は混乱していた。現在売り上げが1000億円となったワタミグループ。その経済活動により排出している二酸化炭素の量は、年間約6万トン。この6万トンの二酸化炭素を吸収するためには4100ヘクタールの森が必要となる。私の目の前に広がる「ワタミの森」、9ヘクタールとはいえ、かなり大きな森である。この森が今まで出来るのに50年かかり、それが地球温暖化の為病気となりすべて伐採される。下草を刈り間伐をしながら、一本一本樹を植える、その樹が一人前になるのに20年。これから私たちが力を合わせ森をつくり、果たしてどこまでの大きさになるのか。10年かけて手を入れられる森が50ヘクタール、いやうまくいけば100ヘクタール。しかしそこには、病気の伐採しなくてはならない樹々があり、まだ植えたばかりの樹々があり、そして10年後にはワタミグループの経済活動はさらに大きくなっており現在の4100ヘクタールをはるかに超える面積の森を必要としているに違いない。
試しに一本の杉をチェーンソーで切らせてもらう。事前説明を受け、いざ本番。
「笛を吹いたら逃げよ」と注意を受けたにもかかわらずそのチェーンソーの大きな音で聞こえず。さほど大きな杉を選んだわけではないのに、倒れるときのその杉の重量感に圧倒される。それもそのはず、10メートルからの樹で細いものでも400~500㎏あると言う。自然というものが、母なる地球というものが50年という年月をかけて育んできた「生命」を感じる。屋久島の山に入るといつも思うことがある。それは「地球の邪魔をしてはならない」ということ。「地球に優しく」なんてとんでもない。地球という大いなる存在は、悠久の昔から「生命の営み」を繰り返してきた。
あるとき、「人類」という生きものがこの地球に登場し片っ端から、悠久の昔から育んできたものを消費し、破壊している。
「地球」にとってみればこれ以上迷惑な話はないだろう。だから何とか私たち人類が、地球に与える被害を最小にしなくてはならない。屋久島では必ずそのことを考える。人類は便利に暮らしたいという欲を持っている。人類は豊かになりたいという欲を持っている。「経済」と「環境」いずれかを優先すべきかの議論がある。今までは明らかに「経済」が優先されてきた。しかし「環境」を優先しなくてはならない日がそう遠くではないことを私は確信する。
「ワタミ」としていかにあるべきか。
「経済」が優先されてる今、この前提ルールから逃げるわけにはいかない。しかし「経済」を優先しつつもワタミらしく、「経済」で負けないギリギリまでは「環境」に配慮したグループでありたい。そして「環境」そのものをビジネスとした「経済」でも「環境」でも勝つグループでありたいと思う。その思いで立ち上げた会社が「ワタミエコロジー」である。たった計9ヘクタールのワタミの森。4100ヘクタールに対して9ヘクタール。ましてや、20年という歳月を要する4100ヘクタール。途方もない目標、あきらめたくなる目標。しかし「ワタミ」はやる。カンボジアでもそうだ。孤児14万人、来春オープンの「夢追う子どもたちの家」たった80人。まさに「焼石に水」である。しかし「ワタミ」はやる。やらなければ「0」は「0」やることで、一歩が始まる。カンボジアの子ども、80人の瞳の輝きが戻ることからカンボジアの明日が始まると信じる。
「ワタミの森」のたった9ヘクタールから、ワタミの全社員の全アルバイトの環境への意識が変わっていくと信じる。「焼け石に水だっていいじゃないか。焼け石に水がふれたら「ジュウ」というだろ。「ジュウ」っていわせ続けたら明日は変わるかもしれない。」ワタミの環境への取り組みのふるさととしたい。この森に、ワタミグループの全社員が一年に一度でいいから訪れることで、ワタミグループの社員一人ひとりが「地球と自分」との関係を見通してくれたら嬉しい。
今回立ち上げるNPOの正式名称が決まる。最初は「ワタミの森をつくる会」にしようとしたが、「ワタミの森」じゃなくていい。スクール・エイド・ジャパンみたいに多くの人を巻き込んでいける活動にしようと法人名を「Return to Forest Life(リターン トゥーフォレスト ライフ」に決める。~山の生命を取り戻そう~という素敵な名前である。山武の死んだ森が、その生命を取り戻したときのことを思う時、心の底からワクワクする。
またフォレスト・ライフを、森の生活と訳するとき~「経済」よりも大切なものがある~
~本来の人の生活は、自然と共にあるべきである~等々のメッセージの響きが伝わってくる。
「ワタミの森」づくりの活動はボランティアが中心となっている。特に、ワタミエコロジーの環境部の遠藤部長を中心に休日返上で活動をしてくれている。一人ひとり「地球温暖化」を憂い、強い危機感を持ち行動を起こしてくれている。心から感謝したい。毎月二回第三木曜第四土曜をその活動の日としている。外食、介護のスタッフへ、奮って参加してもらいたい。またお金もかかる。月々100円でいいから協力をお願いする。やってもやってもやり切れないことばかり追い始めた気がする。でもそれがとても「ワタミらしい」と思う。この活動のなかで一人ひとりの社員が人として成長していくことを心から期待する。